スナマグをご覧の皆さんはじめまして。
僕は名古屋市の大須にある眼鏡屋「MonkeyFlipRosso」で店長をしている高橋といいます。
今回からスナマグの1ページをお借りして「めがね」の魅力を読者の皆さんに知ってもらおう!という連載企画をスタートしていきます。
「サングラス」や「めがね」って、ファッションやカルチャーという側面から見ても非常にアイコニック存在だと思います。遡ればジョンレノンやカートコバーンなどのレジェンドミュージシャン、ジェームスディーンからジョニーデップなどのハリウッドスター達など、例を挙げればキリがありませんが、時代を象徴するような人物の輪郭にアイウェアが一役買っているといっても過言ではないはずです。
もしあなたが歴史的に有名になりたければ、眼鏡やサングラスをかけて続けてみるのも良いかもしれません。
話はそれましたが
早速ですが今回の一本はコチラ
SHURON社 モデル「RONSIR」(ロンサー)です。
ここ数年、アイウェアのトレンドは「ヴィンテージスタイル」や「クラシックスタイル」と呼ばれる、1950~60年代に流行した眼鏡のカタチをもとに、今風に作られているものが多く出回っています。が、実はこのSHURONのRONSIRこそが、そのヴィンテージスタイルの一つである、ブロウタイプの元ネタなのです。
ブロウタイプとは眉毛(ブロウ)に沿った太いプラスチックとその周りを囲む細いメタルフレームが特徴の形です。
いわゆるおじさん眼鏡の代表格的な形で、かけると男らしい雰囲気になるお洒落なデザインで、今では当たり前のように世に出回っていますが、1947年にSHURON社が初めて設計したといわれています。
そして発売後に大ブームを巻き起こしたこのブロウタイプは、政治家や俳優、ミュージシャンといったありとあらゆるアメリカの有名人がこぞってかけ、一躍この時代を象徴するアイコニックな存在となりました。
当時のアメリカ人の写真をググってみると結構な割合で出てきますよ。
しかし時代は移り変わるもの。1990~2000年代になると、徐々に眼鏡の流行はシャープなデザインが多くなり、ブロウタイプはファッション好きの若者から全く見向きもされませんでした。
無理もありません。当時ブロウタイプをかけている人といえば、駅前のケンタッキーのおじさんと、日曜洋画劇場でお馴染みの淀川長治さん、そして近所のおじさんでしたから。
(すいません、今はめちゃくちゃカッコいいと思っちゃってます。)
しばらくのあいだ店の奥で埃を被っていたブロウタイプですが、時代は移り変わり、流行の変化やここ最近の古着人気の後押しで、半世紀以上の時を経て、今では定番のお洒落アイテムへと昇格しているわけです。
ちなみに元祖ブロウタイプを輩出したSHURON社の話をさせて頂きますと。
1865年に創立された超老舗メーカーでRay-BanやAmericanOpticalと並び、アメリカ3大ブランドと言われているので、ファッションに興味がある方は押さえておきたいポイント。
そしてこのSHURONには興味深い事実が二つあります。
一つ目は、同じモデルで異なるサイズ展開を行っていること。実はこれ、日本の眼鏡業界では結構珍しいことなのです。
例えばこんな経験ありませんか?
眼鏡屋さんで気になったフレームをかけてみたらサイズが小さくて、店員さんに「このカタチでもう少し大きいやつありますか~?」と聞くと「申し訳ございません、全く同じ形はありませんので、あちらのフレームはいかがですか?」と、ちょっと違ったモデル(しかも気に入らない)を紹介されてしまった、みたいな。
しかしSHURONのRONSIRならそんな悲劇は起きません。レンズの大きさだけで7サイズ、レンズを繋ぐブリッジパーツで5サイズそして耳にかけるテンプルが5サイズとあり、ほぼすべての顔立ちに対応できるユーティリティ性を誇っています。
一方、日本の眼鏡ブランドではほとんどのモデルもワンサイズでしか作られていません
これには明確な理由があります。
それはSHURON社があるアメリカが「多民族」国家であるということ。アメリカでは白人や黒人、ヒスパニック系やアジア系など、あらゆる民族が生活しています。民族が違うという事は、骨格が違うという事で、アメリカではそれだけ沢山のサイズの眼鏡を販売しないといけないのです。
つまり似合う眼鏡を探すより、各々の骨格に合わせて組み立てて販売する方が手っ取り早いのです。眼鏡選びはあれでもないこれでもないと一苦労することが多いのですが、SHURONの眼鏡であればそういったことが起きませんので、形さえ気に入ってしまえば、あなたの顔幅にピッタリなフレームが「必ず」手に入るというわけです。
興味深いポイントの二つ目。
SHURONは新作を一切出しません。
興味があれば是非本家SHURON USAのHPを見て頂きたいのですが、商品ラインナップをみるとヴィンテージ系の眼鏡サイトだっけと勘違いするくらい、クラシックなモデルが並んでいます。(ちゃんと全部新品です。)
事実そこには何十年も前にリリースしたと思われる、懐かしいと感じてしまうフォルムのアイテムたちが、さも当たりまえのような顔で販売されています。
新作リリースなんて絶対に出ないのでHPは正直見ごたえはありませんが、ちょっとタイムリープした感覚を覚えます。
というわけで、このRONSIRとSHURONのモデルたちは、流行が移り変わろうと、おじさん眼鏡と揶揄されようと、誰にも見向きもされなくとも、何十年間ブレずに、ひたすら生産され続けてきました。
そして時代は巡り巡って、今まさに再評価されているというわけです。
冷静に考えるととても凄いことです。僕ら日本人が誰も気にも留めていなかった20年代のあのころ、広いアメリカでは根強いSHURONユーザーが沢山いたのでしょう。
とにかく今日もSHURONは昔と変わらないデザインで僕たちを迎えてくれます。
皆さんも当時のアメリカの人々がかけていた眼鏡と全く同じ眼鏡をかけることが出来るという、なんとも不思議な感覚を味わってみてはいかがでしょうか。
そしてもし万が一、今後シュロンが新作を出す時が来たら、それは新しいクラシックの始まりなのかもしれません。
MonkeyFlipRosso 高橋
Rosso HP http://monkeyflip-rosso.com/