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【INTERVIEW】『FARMER’S』2代目オーナー 大島 一輝さんは古着大好き。

初代の父親から引き継ぐ形で、二代目となった大島一輝さん。実は前職は銀行員で、脱サラ後、『FARMER’S』の新人バイトとして、古着業界に足を踏み入れた、叩き上げのオーナーだ。トイレ掃除から始まったバイト時代を経て、老舗の人気古着ショップの二代目となった大島さんがこれから目指す仕事スタイルとは。

銀行員から古着屋に転身。
死ぬ気で古着を勉強して、
個人売上No 1を目指した。

―二代目になった経緯を教えてください。

二代目に就任したのは、10年くらい前。それまで15年くらいは、『FARMER’ S』で平社員として勤務していました。もっと昔の話をすると、元々は地元の銀行で勤務していたんです。

―意外です!銀行員から古着屋に転身ということですね。

古着や雑貨系のお店で働くために、修行目的で『FARMER’ S』に入ったのがはじまりです。時給800円で新人バイトとしてお店に入らせてもらって、朝一のトイレ掃除が最初の仕事でした。親父は「本気でやりたかったら、やればいいじゃん」というスタンスで受け入れてくれたけど、めちゃくちゃ厳しかった(笑)

―「息子だから」という特別扱いはなかったんですね(笑)

全くなかったです(笑)正社員になるには、「一ヶ月でいいから、全社員のなかで個人売上1位を獲ること」が条件でした。当時は古着の知識が少なかったので、先輩や色んな人に古着について教えてもらったり、参考書や資料をたくさん読んで、とにかく死ぬ気で古着を勉強しました。あと自分についてくれるお客さんが増えるように、毎日試行錯誤しながら、色んな接客方法をアプローチしたり…。個人売上1位を獲得するまで、4〜5年くらいかかりました。

ー今まで父親だった人が「会社の上司」になるわけですが、関係性に変化はありましたか?

大学生の頃は、アホなことばかりしてくる面白い父親だったけど、一緒に仕事を始めてからは、家の中でも厳しくなりました(笑)僕の考えが「FARMER’ S』引き継ぎたい」という考えに変化していたことに、気付いていたんだと思います。「早く右腕をつけた方がいい」と言ったり、在庫管理から人材育成まで会社に関する全ての話をするようになりました。

商売は仕入れにあり!
“老舗”として生き残る。

―喧嘩することはありましたか?

しょっちゅう喧嘩していました(笑)僕が“親父の理想とする動き”を出来ていない様子が、はがゆかったんだと思います。原因は覚えていないけど、殴りかかりそうになった大喧嘩もありました(笑)親子でも、考え方や価値観はやっぱり違う。自分が良しとしていることを親父に否定されるのが嫌だったし、悔しかった。まぁ、嫌だったことは全部忘れたけどね(笑)

―2代目になった今、どんなことを思いますか?

初代が築いた最盛期に、自分の代でも辿り着きたいという想いは常にあります。元々、『FARMER’ S』は東桜や丸の内でやってたんだけど、その頃、アメカジやヴィンテージブームで、その波を親父は上手くキャッチしていた。今は今の良さがあるけど、あの当時に自分が見ていた景色になかなか辿り着けないジレンマは抱えています。同じく大須で商売をしている仲間達に、そういう話を聞いてもらったりすることもありますね。

ー仲間とはどんなメンバーですか?

僕みたいに大須以外からやってきたけど、大須の人達と一緒に大須を盛り上げていこう!という思いのもと集まったコミュニティみたいなものがあるんです。元々は若宮八幡宮で定期的にお花見をしていたメンバー達です(笑)「桜会」って名付けている集まりなんだけど、同じ大須で商売をしている同士だから、僕のお店の状況も分かってくれている状態で話ができるんですよね。似てる境遇の人もいるし、ちょっとしたグチを聞いてもらう時もある(笑)深い話はしないけど、僕の好きな場所です。

「桜会」メンバーとの思い出写真。

―『FARMER’ S』を経営していく上で、変えたくないことはありますか?

一番変えたくないのは、「接客」です。他店舗と比べて、『FARMER’ S』の接客ってすごくフレンドリーなんです。その雰囲気に何十年もついてくれているお客さんもたくさんいらっしゃるし、この店の魅力だと思っています。あと、元々『FARMER’ S』は、海外のピンバッチやアクセサリーなどのインポート雑貨でスタートしているので、新品のインポート、古着、オリジナルアイテムの3ジャンルくらいを常に展開して、時代に沿った動きをしていきたいです。それに、価格帯も変えたくないです。もう少し値段を上げてもいいかなと思うアイテムもあるけど、上げたところで、お客さんに「高いね」って思われたら、そのお客さんはもう来てくれない。「この店、見た目はいかついけど、安いし買いやすいじゃん」って思われた方がいいんです(笑)


―古着ブームの影響で、古着屋を訪れる人も増えましたもんね。

正直、古着ブームの到来は全く予想していなかったです。でも2020年の秋頃、コロナの影響で一度は引いたお客さんが戻ってきた時期、急に若い世代のお客さんが増えて、古着が売れ出したんです。そこで、さらに古着を多く置いたら、また売れた。その頃から初めて、古着が動き出しそうな感じがしました。

―今後、力を入れていきたいことはありますか?

今は、時代もトレンドも、すごく動きが早いので、時代に合わせて、柔軟に動ける若手スタッフを育てていきたいです。もちろん僕自身も店頭に立っていきたいし、全体管理もするけれど、自分一人できることには限界があります。『FARMER’ S』のスタッフはバイトを含めて、20代前半が中心で、昨年オープンした『FARMER’ S 2nd』については、「若い世代で店作りをしていってね」と、現場の若いスタッフ達にある程度の仕事の管理や判断を任せています。時代の移り変わりが早い分、お店の印象は、お客さんと一番近い距離が近い、現場スタッフ一人一人の力量にかかってきます。『FARMER’ S』として一番大切にしたい「接客」を軸に、若手の現場スタッフ達が伸び伸びと仕事を続けてくれたら嬉しいなと思います。

撮影/鈴木 啓司 取材・文/山田 有真

『FARMER’ S』オーナー 大島 一輝さん

今も店頭で接客をしている大島さん。若手スタッフ達との会話にはラフな雰囲気が漂い、現場目線を忘れない大島さんに対する、スタッフ達の信頼と安心感が垣間見えた。

FARMER'S本店

SHOP DATA

店名

FARMER'S本店

取扱ブランド

USED | VINTAGE | Dickies | FIVE BROTHER | Cycle Works

カテゴリー

セレクト | ユーズド | アクセサリー | メンズ

Tel

052-269-2615

営業時間

11:00〜19:00

定休日

無休

住所

名古屋市中区大須3-22-29

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