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【INTERVIEW】Rattieオーナー 岡田さん「何事にも「時合」がある。 地力をつけて、たのしみながら。」

東京・表参道にて美容師デビュー。

その後、紆余曲折を経て、地元の東海エリア・名古屋にて店を構える岡田氏。

彼のこれまでの奇跡と、これからの展望について、なんとなくちょこっとだけ聞いてみた。

なぜ、岡田さんは美容師になろうと思ったのですか?

当時の僕らの世代の場合、美容業界の華やかさに憧れて、目指した人がほとんどだと思います。空前のカリスマ美容師ブームでしたからね。僕もそれに触発されたうちのひとりです。「この仕事すれば確実にモテる!」って(笑)。そんな動機で名古屋美容に進むことに。ただ、今では考えられないかもしれませんが、当時は専門に入るのにも10倍くらいの競争率だったんですよね。なんとか自分はそこを突破して、美容師になることができました。

同期のみなさんは現在も美容師をやっていますか?

いや、ほとんどやっていないですね。やっぱり、理想と現実というもののギャップがあって、この業界を離れていく人はたくさんいました。同期で続けているのは5分の1くらいだと思います。ちなみに僕も一度、この業界を辞めているんですけどね(笑)。

どのような理由で辞められたのですか?

東京の表参道にある美容室で働いていたのですが、やっぱり、意識が足らなかったのでしょうね。好きなことをするには、嫌なこともしなければならない。この基本は、どの職業にも当てはまると思います。しかし、当時の僕にはそれがわからなかった。その後、アパレル業界と広告代理店に転職して経験を積んだ後、再び美容業界に復帰しました。

復帰された理由は?

隣の芝は青いじゃないですけど、改めて、離れてこそ見えてくる美容師という仕事の魅力に惹かれたからです。美容師には、お客様を笑顔にできる、特別な力があります。入学や卒業、結婚や出産など、それぞれのお客様の人生におけるさまざまな晴れの舞台に華を添えることのできる、素晴らしい仕事だなと再認識できたので戻ってきました。復帰したのは仙台の美容室にて。しかし、震災によってその店は営業できなくなり、地元である東海エリアの名古屋で独立しました。

紆余曲折を経て、ご自身の店をオープン。いかがでした?

最初の頃はめちゃめちゃ暇でした(笑)。つながりがほとんどありませんでしたからね。なので、ポスティングしたり、地下鉄の出入り口でチラシ配ったりして、地道に営業活動も行いました。あと、美容師友達はもちろん飲食店の友達をつくるのためにも、交流活動には積極的に取り組みました。やっぱり、人と人のつながりは大きいので。名古屋という街柄、そういう特性はなおさら強い傾向があるのかもしれませんが。

オーナーとして13年、開業当初と今では見える風景は異なりますか?

だいぶ時代が変わったと思います。今はかつてのようにガツガツやって300万400万やりましょうって時代ではないですからね、トップスタイリストに何人もアシスタントがいて、というような。あの頃は必死だったので「自分が他のスタッフを食わせてやっている」くらいの意識でしたが、今は、どれだけみんなに助けてもらいながらやっていけるか、という考え方を持てるようになりました。ひとり一人のスタッフが成長して、人生を歩んでいく姿を見ていくのは、僕自身の大きな喜びでもあります。

また、この業界を志す人もミーハーだった僕らのときとは違って、手に職をつけて将来も見据えている人が増えたと感じます。どうしても離職率の高いイメージのある業界ではありますが、オーナーのひとりとして、ずっと働ける環境づくりには尽力していきたいですね。

これから美容師を目指している人に、伝えたいことは?

本気で好きなことをするには、好きじゃないことも本気でする必要もある、ということですかね。正直、駆け出しのころは、つまらないです。これはきっと他の業界でもそうだと思います。決して楽をしようとしないでください。今現在、国家資格を取得するため、疑問を持ちながらオールウェーブという試験に取り組んでいる人もいると思いますが、必ずそれは、いずれ役に立ちますから。基礎力のありがたさは、後になってからしか見えてこないものでもあります。

僕は釣りが趣味で、この趣味には仕事と通ずるものがあるなとよく感じます。どちらも「時合」が大切だなと。釣りには、よく釣れる条件が整うときがあります。それは仕事も同じで、報われるときがふと訪れます。釣り糸を垂らし続けていなければ、仕事をやり続けていなければ、その結果に出会うことはできません。なので、簡単に諦めたりしないでほしいと切に願います。

僕の場合、はじめて自分のイメージしていた通りのカットやカラーができたとき、大きなやりがいを感じました。施術するのは人形ではなく、さまざまなお客様であり、頭の形状や髪の質や量、求められるスタイルも十人十色です。そして、そのニーズを的確にくみ取り、自分の技術で、お客様にとって最高の答えをお返しすることができたときには…ぜひ味わってほしいですね。

ちなみに岡田さんの店に向いているのはどんな人ですか?

僕たちの店以外にも当てはまるかもしれませんが、チームワークを大切にできる人ですね。お店はひとりのものではなくて、働くみんなの力で成り立つものなので。あと、ベクトルを相手に向けられる資質も大事かなと。自然と相手をたのしませてあげられるような人。お客様に対してはもちろん、スタッフに対しても、相手がうれしいと感じることを自分の喜びに変換できる人は、いい美容師になれると思います。