真夏のピークが去った今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。
サングラスを暑い車中に置きっぱなしにしてませんか?
熱でフレームぐにゃぐにゃになりますよ。
それでは、今日の一本
「越前國甚六作 甚ノ五拾参」 28,600円(税込)
見てください、この綺麗な眼鏡を。まるでガラスで出来た工芸品の様に、透明感が際立つ一本に仕上がっています。
コチラは眼鏡の聖地と呼ばれる福井県鯖江市の眼鏡職人、のブランド「越前國甚六作」のフレームです。特徴的なのはセルロイドという素材を使用していることです。
ではここで皆さんに問題です。
改めてサイド(テンプル)をよく観てください。
コチラのフレーム、一般的なプラスチックフレームにはある「何か」がありません。
さてそれは一体なんでしょうか?
わかりましたでしょうか?
正解は
「手(テンプル)の中に、金属の芯が無い」
でした。
一般的な眼鏡の作りだと眼鏡の手の中に金属の芯を入れて(シューティングして)、テンプルの形を安定させ、さらに使用後の形崩れを起こさないようにするのですが、このモデルは芯が入っていません。
なぜならこのフレームに使われているセルロイドは板状の生地のままで何年も寝かし、歪みが起きない安定した状態になったところで眼鏡として製作しているのです。
そして、セルロイドという素材自体も元々硬く歪みが生じにくいので芯を入れなくても、眼鏡としてしっかり成り立っているわけです。
ああ美しい。
ここでちょっとだけセルロイドのお話を。
セルロイドフレームって、プラスチックなので、石油で出来ていると思われがちなのですが、意外や意外、そんなことはありません。
原料はなんと綿やパルプ。
それに硝酸や樟脳を混ぜて作られた合成樹脂です。つまり自然から出来た植物由来のものなんですね。
セルロイドの発明については諸説あるようですが、1870年にアメリカ人のジョンハイアットさんがビリヤードの球を象牙の代わりに作ってから、キューピー人形などのオモチャやレコード盤、映画のセル画としても大活躍しております。
そしてその活用方法は眼鏡としても。
加工しやすく肌当たりの良い植物由来のセルロイドは眼鏡業界に革命を起こし、あれよあれよとプラスチックフレームの主流になっていくのです…が、1950年代にセルロイドによる火災事故が相次ぎ、世界的にセルロイド排除運動が広まり、生産量はめっきり少なくなっていったのでした。
そんなレアなセルロイド製の眼鏡を作っているのが今回のフレームの製作者、「越前國甚六」こと長谷川正行氏なのです。
氏は1952年、福井県越前市で生まれ、中学卒業後から眼鏡職人としての道を歩みだしました。
そして、今日現在までに数多くの素晴らしい眼鏡を手掛けている、日本の眼鏡業界の宝の様な人です。
一般的なアセテートよりも加工が難しく、熟練された技術が必要なセルロイド生地を加工する技術は突出しており、磨き込んだフレームはなんとも言い難い美しい艶が出ています。
そして先程の「ノー芯」技法で、さらに生地の美しさが際立ちまくっております。
眼鏡は顔の一部なので、折角ならこんな素敵なフレームをかけて、美しい日々を過ごしてみたいものですね。
MonkeyFlipRosso 高橋
Rosso HP http://monkeyflip-rosso.com/